特別支援学級では内申点は付けてもらえるの?【NEXT特捜隊】
2024.07.07
小中学校に設置され、比較的軽い障害がある子どもが通う「特別支援学級」。高校受験で重視される内申点の仕組みを紹介した静岡新聞社「NEXT特捜隊」に、浜松市の中学生の母親佐藤さん(仮名)から「支援学級では内申点は付けてもらえるのでしょうか」と疑問が寄せられた。支援学級の内申点の仕組みや進路について調べた。
学習内容に応じ、指導要領に評定 内申点は、中学生の学習を評価する5段階の数字「評定」の9教科合計。中学が高校に送る「調査書」に記載され、高校入試の選抜材料となる。佐藤さんは複数の同市立中の支援学級について情報収集した。A中は「評定が付かない」、B中は「評定は付くが通常学級とは数字の意味が異なる」、C中は「通常学級と同じ評定が付く」。自身が参加した学校説明会と知人の情報を総合した結果、「学校ごとに評定の仕組みが違うのか」「内申点の基となる評定が得られず、高校受験できない恐れがあるのか」と疑問が生じた。
支援学級の評定の仕組みとは。浜松市教委は「どの学校の支援学級も評定の仕組みは同じ」と説明する。学校が生徒ごとに必ず作成する書類「指導要録」には、評定が数字で記載される。同要録は「調査書」の原簿でもあり、「どの生徒も高校受験の機会を得られる」(市教委)。通常学級でも支援学級でも学習内容が同じなら、同じ目標や規準の評定になるという。
ただ、生徒の特性に合わせ、当該学年の学習指導要領とは異なる内容を学ぶケースでは、通常学級とは異なる目標や規準の評定となる。また生徒と保護者に学びの状況を示す“通信簿”では、子どもの努力を分かりやすく伝えるため、評定を数字でなく文章で表現することもある。
つまり、A、B、C中の情報は、調査書や指導要録と、“通信簿”の学習評価の示し方が入り交じり、学習内容についても複数のケースが混在していたと考えられそうだ。
県教委によると、高校受験の調査書には在籍学級を明記する必要はなく、評定も数字が載るのみで個別の目標や規準に基づく内申点であると示す欄もない。しかし高校関係者によると、所定欄はなくとも、中学が支援学級に在籍したことを備考などとして記すケースもあるという。
県、市教委ともに、特性やニーズは一人一人異なり、不安な際は担任や特別支援教育コーディネーターへの相談を呼びかける。
佐藤さんは「評定の在り方は将来の進路にかかわり、中学入学後に知るのでは遅い」と指摘。参加した説明会では保護者からの質問後に初めて学校側が評定について説明したと明かし「入学前に子ども本人と保護者に知らせる仕組みを整えてほしい」と注文する。
(教育文化部・鈴木美晴)
高校進学の割合 高まる 県内の中学に設置された特別支援学級の卒業生の進路で、高校進学の割合が近年高まっている。
県教委によると、2023年春の卒業生806人のうち、特別支援学校高等部への進学者は351人(44%)。高校進学は316人(39%)だった。過去5年間の進路では、いずれも最多は同高等部だが、高校は2番目に多い。高校進学の割合は増加傾向で、22年春は3割を超え、23年春は4割に迫った。
ただ、全日制、定時制、通信制の内訳は公表されていない。教育関係者の中には、支援学級から高校に進学した際の環境の変化の大きさを指摘する声もある。佐藤さんは「高校のどの課程かにより学習環境や進路は大きく異なる。個々に合った進路を選べるように情報がほしい」と公表を求める。
特別支援学級 知的障害、自閉症・情緒障害、肢体不自由、難聴、弱視、病弱など、多様な障害がある子どもが通う。浜松市では発達支援学級と呼ぶ。1学級8人程度で、特性に応じた専門的な教育を行う。障害の認知や支援のニーズの高まりにより、県内では学級数も児童生徒数も増えている。県教委によると昨年の設置数は小中の合計で1699学級、児童生徒数は9032人。